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3.冠詞

別途まとめようと思っていますが、一語一語のみならず、文や句の中でも自ずとアクセントの強弱が生じ、「その言語らしさ」のポイントになっています。その点から見ると、冠詞は、完全に脇役扱いです。文法用語ではproclitic (proclítico)と言い、「後接語」などと翻訳されます。「何かの後に接続する」のではなく、「何かしら後のものに接続する」ということのようです。漢語のスジからすると「接後語」ではないかとも思うのですが、エライ人が決めてしまったことなので仕方ありません。どのように脇役かと言いますと、、、慣れないと聞こえません(とりあえずの参考:「弱い音が聞こえない」

よく聞こえないから放置してよしというわけではないでしょうが、私がこうして書いていることを含めて、冠詞についての解説にはなかなかズバリとくるものがありません。「定義」が挙げられていても、それとあわない用法が多く、用法から定義を考えだそうとしても、例外の多い不思議な定義になりがちです。『諸相』での池上教授も「行けるとこまで」などと妙に弱気ですが、そんな言い訳はどこへやら、例外の少ないキレイな規則を立てるべく、冠詞の正体を猛追して行きます。

長い説明に耐えられない方のために軽くネタバレしておきますと、定冠詞と不定冠詞の違いだけではなく、冠詞がないことにも意味があることと、そこに出現する名詞が指す「もの」や「こと」について、それが「(実際にある)特定(のものを想定したもの)」であるかどうか、ということに注目です。

3−1.一般的な冠詞の定義

優れた文法書として評価の高い"Nova Gramática do Português Contemporâneo" (/ Celso Cunha et Luís F. Lindley Cintra)では、定冠詞と不定冠詞について、それぞれ次のように定義されています:

  • 定冠詞: 前もって言及されていたり、経験によって既に知られているものであったりということで、読者(聞き手)が既に知っていることであることを示す。
  • 不定冠詞: 前もって言及されていない、ある事象の集合を無作為に代表するものであることを示す。
    • ...現代語では、定冠詞は概して単なる指示詞である。普通名詞の前に位置して、それを定義する。言い換えれば、他のものまたは所属する集合内の事象と区別されたものとして、それを提示する。
    • ...不定詞−−前述の通り−−一義的には、読者(聞き手)に知られていない事象を提示する機能を担う。
    • ...言い換えれば、定冠詞は、本質的に、言及される事象が、対話者双方にとって、周知・既知であることを示す信号である。それ対して不定冠詞は、懸案の事象が、対話者の一方(聞き手)にとっては固体識別ができない、周知が不十分であることを示す信号である。

私のやっつけ翻訳が信用できないかもしれませんが、そこは、是非(!)『諸相』ないし"NGPC"で確認してください。

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3−2.冠詞の出現パターンと意味の違い

まず、おことわりを。話を単純にするために、以下の状態を採りあげます:

  • 普通名詞と冠詞の関係のみを考える
    • 固有名詞と冠詞の関係には触れない
  • 裸の名詞を基準とする
    • 形容詞、前置詞句、関係代名詞節などによって修飾されていない
    • 複数形でもない

裸の名詞が文中に出現するパターンは、次の3つです:

  1. 定冠詞+裸の名詞
  2. 不定冠詞+裸の名詞
  3. 裸の名詞のみ

3の「裸の名詞のみ」について、見えない冠詞(例えば「ゼロ冠詞」と呼べるようなもの)を想定すると、「名詞には必ず冠詞をが付く」などと定義できて便利そうですが、他で色々とつじつまを合わせなければならなくなるかもしれないので、「裸の名詞のみ」として話を進めます。ただし、「冠詞がない」ということ自体がひとつの重要な信号となり得ることには留意しておきましょう。

例えば、運転者は「進入禁止」の標識があれば進入不可であることを認識しますが、その一方で「進入禁止」の標識がない道路は進入可であると認識できます。「標識がない」ことが一種の標識となっていると言えるでしょう。

具体例を挙げます。一人の話者が以下のような話を続けてしたとすると:

  1. Ontem vi uma criança no parque. 昨日、私は公園で子供を見かけた。
  2. A criança estava com cinco amigos. その子は5人の友達と一緒だった。
  3. Mas criança tem amigo e inimigo. しかし、子供には友達もいれば、敵もいるものだ。

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冠詞の有無の意味

ここで注目したいのは、1と2における(冠詞+)criançaが、どちらもespecífico(特定)、すなわち、(少なくとも話の上では)実在する一人の少年、例えばJoãozinho(仮名)を指定しているのに対して、3に見る裸のcriançaJoãozinho(仮名)ではなく、子供一般を示していることです。多くの例を思いつきませんが、ほとんどの普通名詞で同じ状況が確認できることと思います。

つまり、定冠詞・不定冠詞の別以前に

  • 冠詞は次に現れる名詞の指すのが、特定の「もの」または「こと」であることを示す。
    • 冠詞がないということは、そこに使われている名詞の指すのが、不特定の「もの」または「こと」であることを示している。

と言えるということです。

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定冠詞と不定冠詞−特定の事象が、definidoindefinido

続いて冠詞+名詞で表される、特定の「もの」または「こと」の内、それがdefinidoであるか否かが次の問題ですが、definidoであれば定冠詞、そうでなければ(indefinidoであれば)不定冠詞が現れます。

いきなり"definido"と言われても、何をどう定義するのか、限定するのか(特定のものを限定って?)、明示するのか(何を?)、、、どういうことかとまどいますが、『諸相』では、definidoindefinidoかと提示されており、その定義については「本論から外れるので省略」だそうです。「"NGPC"に見るような一般的な意味で充分説明できる」とも書かれていますので、そのつもりで考えておくことにしましょう。

つまり、ここで言うdefinido

  • 前もって言及されていたり、経験によって既に知られているものであったりということで、読者(聞き手)が既に知っていることであるということ、、、とはっきり分かるように示されていること

であり、

indefinido

  • 前もって言及されていたり、経験によって既に知られているものであったりということで、読者(聞き手)が既に知っていることであるということ、、、が示されていないこと

または、

  • 読者(聞き手)にとって、前もって言及されておらず、経験によって既に知る機会もなかったことであること、、、が示されていること

と読み替えられるものとします。

「NGPCに見るような」とはあるものの、それが、このことを指すのか、、、このように読み替えることが、池上教授の意図と合致しているかどうか、少々、自信がありません。ひととおり読み進める中でムリはなかったようですが、既に存在する定冠詞・不定冠詞の定義から、それに対応する機能を説明する循環論法に近いものを感じます。こういうところも『諸相』の敷居の高さなのですが、、、。

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集合で確認

ちなみに、念のためですが、一に冠詞の有無、二に定冠詞か不定冠詞か(あるいは、一に特定か非特定か、二にdefinidoindefinidoか)という識別フローについて確認しておきます。結論を言うと、逆や並立はありえません。これは集合と考えるとわかる話です。

子供⊃特定の子供⊃聞き手が知っている子供

子供⊃特定の子供⊃聞き手が知らない子供

もうひとつ、ちなみに、特定・非特定が冠詞の有無で表示される(交通標識方式)であるのに対して、definidoindefinido の違いは2種類の記号(定冠詞と不定冠詞)を使うのはなぜでしょうか。難しいことではなく、記号がないという記号は、既に第一のフィルターである特定・非特定で使われているので、区別できなくなってしまうからです。

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複数形はそれ自体が「特定」

単純なことにわざわざことわりを入れたのは、複数形のことを考えるためです。definido である as crianças に対応する indefinido は、umas crianças ではなく、crianças です(uns, umas は「ある程度の数の(≒some)」)。「特定と非特定の区別はいいの?どうなっちゃうの?」と心配になりますが、『諸相』では、複数形の名詞で表されるのは「特定」に限る(「非特定」はありえない)から、と説明されています。

例えば、子供が複数である(数えるのが面倒だけど、とにかく一人ではない)ことを認識するためには、そこに「子供たち」が実在することを想定しなければ始まらない(一番ありえそうなのは、本人たちを実際に見ている)ということです。

表にまとめると、以下のようになります。

  単数 複数
非特定 criança なし
特定 definido a criança as crianças
indefinido uma criança crianças

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ここで少し気になるのは、

  • Criança tem amigo e inimigo.

に似た言い方で、

  • Crianças têm amigos e inimigos.

あるいは諺で、

  •  Pássaros e pardais, todos são iguais.

果たしてこれらは、「特定(実在の誰か、何かを想定しているもの)」なんでしょうか?

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